組織内会計士の日常

組織内会計士の日常を綴っています。

東芝の不正について、自分なら組織をどう立てなおすか

東芝の不正が表沙汰になっていない状態で、私がヘッドハンティングされて東芝に転職。実はこういう真っ黒な状態だとCFOに打ち明けられて、立て直しの責任者に任命されました。さて、何を最優先にして組織改革を進めるべきでしょうか。また、何から手をつけましょうか。

まずは逃げたい

恥ずかしい話ですが、こういう状況であれば、まずは全力で逃げます。

自身の価値観として、会計士という肩書と会計士業界のイメージを大事にしたいと考えています。前者について、立て直しがキャリアゴールでなければ、その後もおそらくファイナンス関連のポジションがキャリアを積んだり、会計士として独立等の選択もある中で、わざわざ自分の履歴書を汚すようなこと、もっと具体的には立て直しに失敗した場合、まだまだやりたいことがあるにも関わらず、選択肢が一気に狭まることは避けたいと考えています。後者については、やっぱり自分を育ててくれた業界のイメージは大事にしたいので、同じく失敗した場合に業界のイメージ悪化につながるのは避けたいです。粉飾発覚後、「外部から招集した者も改革に失敗し…」とメディアに書かれるのは良いのですが「外部から招集した会計士も改革に失敗し…」と書かれるのでは、業界のたたかれ方が違うと考えています。

 さて、腹を括って改革する場合ですが、まずは最初の3か月で原因の調査を行います。その結果が今回の第三者委員会で公表されているものだとします。

誰から助けるべきか

最初に、何を優先するかという点については、まず「誰から助けるべきか」ということを考えました。この事実が明るみにでたときには、少なくとも顧客・従業員・投資家は被害を被りますし、誰かを優先させると、必然的にその他の優先度は落ちます。ただ、今回の内容だと、それぞれの傷の深さが異なります。製品上の機能や品質に対するものでなかったので顧客に対する直接的な影響は少ないでしょうが、従業員(特に経理部)と投資家への影響は言わずもがな大きいです。

最初に助けないといけないのは、今回は従業員です。次に顧客、最後に投資家です。この順に助けます。

組織改革は頭から

どう改革するかという点ですが、まず、この規模の粉飾だと隠れてこっそりやるのは非常に厳しいので事実を明るみにすることを前提にしています。やり方が非常に難しいのですが、CFOが自分のクビまで掛けており、経営層の中でも抜きんでた意思決定権限がある仮定にたてば、最初にやるのは組織の上層部の人員を抜本的な変更です。持論ですが、強い組織というのは多様な価値観を持った人間が集まる組織だと考えているので、国籍問わずで外部から取締役会の3割の人員を連れてきます。3割としているのは、半分を超えると東芝らしさが良くも悪くも失われ、1割だと声が小さくてやっぱりガバナンスが効かないと考えています。CEOとCFOだけは必ず外部の人間にします。できれば外国人です。日本の中ではプロ経営者と呼ばれる人自体少なく、また、こういう難局を乗り切れる経営者候補の人材も非常に少ないのが日本の現状と考えています。また、経営層以外では経理部長クラスの方も変える必要があります。

f:id:wasavis:20151108110312j:plain

事業存続に不可欠な売上

人事の次は営業現場です。まずは営業の方には、物凄く風当たりの強いやり取りに耐えて、数字を積み上げて売上に貢献してもらわなければなりません。会社として売るものがなければ、そもそも事業自体が存在しなくなるので、まずは営業の現場における影響を最小限に留める方法を考えます。そういう意味では、例えば、この状況を逆手にとって値引き交渉をしてくる関係者も想定されるので、ある程度、その辺りの概算を把握しておく必要があります。

f:id:wasavis:20151108110202p:plain

 

外部の改革者として重要なメッセージング

ようやく、経理部の立て直しです。テクニカルな解決方法よりも、最も重要なのが最初に伝えるメッセージです。喜怒哀楽の選択が難しいところですが、まずは共感を示します。おそらく東芝に入社されるほどの方なので、(新卒を除けば)会計に疎いわけではなく、日々の会計処理に違和感を感じなかったわけではなく、罪悪感はあったことについて共感をしめします。共感を示す理由は、二つです。一つはしっかりと自身が行った判断について、各自が戒めてもらいたいから、もう一つは、これからの改革にあたって、私が経理部の方の気持ちがわかる味方だと思ってもらいたいからです。

次のステップですが、プロジェクトチームを組成して改革を進めます。できれば外部の人材を1人か2人登用し、その人材をリーダーにして進めたいのですが、そのリーダーが上手く組織に溶け込みつつ、大多数の反発を抑えながら改革を進めるのはかなり困難です(=このシチュエーションにおける私も無理です。)したがって、リーダーは内部の人材のうち、比較的明るくて、改革推進派に近い存在を選びます。プロパー(新卒入社)や若手であればなおよいです。私はこのリーダーをサポートする役割に徹します。外部の人材を登用するより改革に時間がかかり、おそらく1年以上はかかるでしょうが、あえて内部の人材を登用するポジティブな面として期待しているのは、自己回復です。腐った組織ではありますが、想像するに、この組織の中で中途入社の人が占める比率は少ないでしょう。つまりは新卒入社を大事にする文化であり、それ故に、その大多数の中からリーダーを選ぶことで、自分たちで立て直したという感覚をもってもらえると思っています。例えば、中途入社の私が一から全部やってしまうと、「外部の人に立て直してもらった。」ということになり、良い意味での東芝らしさも失われてしまうものと思われます。

超ハードな組織改革

この規模の組織改革は、1人だと絶対に無理だというのが結論です。自身の経験に照らしあわせても、考えただけでもゾッとする規模です。それ故に成果が出せたときのインパクトも大きく、引き続き今後の動向にも注目したいと思います。

 

ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村