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組織内会計士の日常

組織内会計士の日常を綴っています。

ビックカメラの値引きから考える、価格戦略と承認権限

先日ビックカメラで少し大きめの家電を買いに行きました。やはり大きな家電を買うときは値引き交渉をしますね。値引きの金額があまりにも大きかったせいか、店員さんは例によってお店の奥の方へ走っていかれました。おそらく上司の方と相談されているのでしょうか。こういうシーンを見るたびに、いつも価格戦略やその承認権限について考えさせられます。

売上=単価×数量という数式がなぜ重要か

この数式、会計に明るい人にとっては至極当たり前なんですが、事業経営をするうえで非常に重要な数式です。数学上は単価と数量は等価ですが、経営上は単価の方がより重要です。売上はできるだけ単価の高い製品を売れた方が良いのです。同じ売上を作るにしても、単価100のものを1個売るのに比べて、単価1のものを100個売る場合… 

  • 100個を梱包するための作業費がかかる
  • 100個の中に品質不良が混じっていないか検品が必要になる
  • 100個売れるまでに時間がかかり、その分人件費がかかる
  • 100個を届けるまでに配送費がかかる 

 と、数量に連動して発生する費用があるので、利益確保の観点からは高い単価でできるだけ稼ぐというのが賢い方法になるのです。

値引率の算定の基礎は製品ごとの粗利率から

では、ここからが本題です。

BtoB、BtoCはもちろん同じ業界でも会社によって異なるものですが、往々にして、一つの製品を販売するとき、その製品で絶対的に守らなければならない最低限の利益率が存在ます。これを割ってしまうようだと、粗利が赤字になり、まずそこから下の項目では利益が取り返せなくなります。標準原価計算を前提にした場合、原価は決まっていますから、あとはどれだけ高く/安く売るかで粗利が変動してきます。この粗利を変動させるものが値引き率ですね。粗利はその他にかかってくる費用をを賄えるだけの利益が必要です。

したがって、原価に加えて必要になってくる販売費用も製品によって異り、それゆえに製品群ごとの利益率も異なります。その結果、最低限の値引率も製品によって異なるのです。

複雑さを増す値引パターン

単一の商取引であれば、非常に簡単、ある意味では理論通りの値引率でコントロールできそうなものですが、実際には様々な要素が値引きに影響を与えています。

  • 複数の製品を大量に買うので、それぞれを個別に買うよりも大きく値引いてほしいという顧客の依頼
  • 製品の型番が古くなったので、多少の粗利を削ってでも不良在庫を減らしたいという物流部門の思惑
  • 新生活応援キャンペーンなどBtoCの業界にありがちな季節変動要因
  • 他社の戦略を無効化するための同質化戦略などなど

一言で申し上げれば非常に複雑なプロセスです。

誰が値引の承認権限を持つべきか

別の角度からですが、値引に際して誰がどのように承認するのかというのも非常に面白い論点です。家電売り場でよく見かける、「ちょっと確認してきます。」と店員さんがどこかに消えるシーンはよく見かけますが、あれは上司の方の承認をもらいに行っているのでしょう。

承認権限は売上と利益のトレードオフ

ここの営業の方は製品の販売売上予算が設定されており、会社によってはその予算の達成度合いによって歩合を支払っているところもあるかと思います。そういう環境下においては、個々の営業員は例えどれだけ安くなろうとも自分の予算を消化したいと思ってるはずです。

一方、会社全体としてはたとえトップラインの売上が良くてでもボトムの利益が残っならせれば健全な経営とは言えません。この利益の部分、引いては配当の原資にもなるので、当然のことながら社長が一番気にしています。

組織階層にもよりますが、現場の営業ほどトップの数字、本社ほどボトムの数字を意識するようになり、またその様な評価が行われています。ゆえに、営業の方の一つ上の上司は、コントロールして良い値引き率の中で課せられた数字目標を達成していきます。

承認権限は裁量とスピードのトレードオフでもある

 では、コントロールして良い値引き率を超えたらどうなるのかといえば、さらにその上の上司に相談です。取れそうな売上の絶対額と、残る粗利、それからもちろん自身が管理する組織の予算消化率を睨みながら判断していきます。実務で携わらないとあまり実感がないかもしれませんが、意思決定において、そのときにおける予算の消化率って結構重要ですよ

あまり現場の階層まで大幅な権限を委譲すると、その管理が難しくなる一方で、BtoCの業界では、ある程度の裁量を現場に渡さないと、素早い意思決定が下せません。その意思決定の迅速さも顧客満足度に繋がり、ひいては将来の売上につながってきます。

価格戦略に正解はあるのか

色々と書いてきましたが、価格戦略って確実に当たるかどうかわからないのが一番の悩みどころだといつも感じています。同業他社や顧客の趣向、そのときどきの社会情勢なんかも影響してきて、完全に企業がコントロールしきれる部分ではないのかなと思います。一方では、数年前から流行り始めているビッグデータや、ウェアラブルデバイスの普及に伴う行動分析などを用いて確度の高い実行案が作れる日が来るのではないかと期待しています。

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