組織内会計士の日常

組織内会計士の日常を綴っています。

あの仕事はどこへ行く?今年の会計士業界の仕事事情と来年の見通し<2017年度版・前編>

2017年もあとわずかとなりました。

今年も色んなニュースがありました。年に一度ぐらいは自分のキャリアの棚卸も兼ねて、今年の会計士業界を取り巻く仕事の変遷と来年の見通しはどうなのかについて整理したいと思います。

書いててかなり長くなったので、前編後編に分けます。前編では会計監査とIFRS、後編ではアドバイザリー・コンサルティング業務とその他です。

会計監査業務は引き続き晴れ 、来年もおそらく晴れ

まず初めに、会計士業務のど真ん中、独占業務である会計監査についてです。

仕事増、チャージ増、退職増の三増

会計監査については、ここ数年人手不足の流れがあり、2017年も変わらずの状況でした。最も足りていない層は、スタッフ4年目からシニア2年目ぐらいまでの人たちで現場を任せることができ、かつ、手を動かしてくれる人たちです。2009-2012年半ばぐらいまで続いていた、中々残業がつけられなかった時代とは一変し、普通にチャージできている状況のようで、合格したての人にとっては良いタイミングなのかなと思います。アベイラブルも少なそうなので。

 

大手Big4では人材流出が非常に顕著であり歯止めがかかってない状況です。チャージが可能な反面、やはり仕事量(というより調書量?)が圧倒的に増えており、今年の流行語大賞にノミネートされた働き方改革の流れとは全く逆の労働環境になってきています。

退職した彼ら彼女らはどこにいったのかと言えば、大手の事業会社に加えて、昨今はスタートアップに行ってる方や独立してる方も増えてきているようです。若手会計士の独立が少ないとずっと嘆いてる人がいましたが、昨今は少し風向きが変わってきています。

 

IPOを受けられる半面、人員の調整が難しい中小ファーム

少し視点を変えて中小の監査法人、少人数で監査業を引きうけている人達はどうでしょうか。もともと、こういう規模のところでは、スタッフワークは非常勤でまかなっていることが多く、職員数でいえば、過半数を非常勤が占めることも珍しくありません。

故に固定的費用が大手ほど発生せず、報酬単価の調整もしやすいのが特徴です。

非常勤の働き方については、下記でまとめています。

kurorogucpa.hatenablog.com

 

大手の監査法人IPOに向けた監査を断っている背景から、これらのファームに受注が寄ってきています。そのため、クライアント数は増加しやすいのですが、一方で難しいのは人員の調整です。もともと非常勤の比率が高いうえに、増えてきているのは上場を目指す企業です。当然に、監査資料が出てこないこともあれば、経理担当者に会計の知識がないこともあり、はたまた報酬が契約書通りに払えないなんて話もあります。 

データセンターをはじめとするコストカットによるKAIZEN

そういう環境下で、トーマツがこういうサービスを始めました。付加価値の低い業務を切り離し、賃金のアービトラージで収益改善を図るアプローチです。

diamond.jp

結果の良し悪しはこれからですが、この施策はある意味、報酬増が難しいことの裏返しでもあるのかなと考えました。業界に入ったときに昔話のように何度も聞かされる話ですが、米国との監査報酬の差はいまだ大きく、アベノミクスのような景気が回復してきた局面においても、その差は徐々にでしか埋まってきていません。報酬が一定であれば、収益性を改善するにはコストを切り詰めていくしかないものの、コストカットにも限界があるので、来年の後半にはまた別のトレンドが始まるかもしれません。

 

監査業務については、来年度においても、引き続き、高稼働率が予想されます。

IFRS業務は今年まで晴れ 、来年は若干曇りかも

次に、IFRS関連のアドバイザリー・コンサルティングサービスです。

 IFRSを適用する上場企業は昨年末で100社を超えており、この任意適用増加の背景にはもちろんBig4を中心とする監査法人が地道にアドバイザリー・コンサルティング業務を提供してきたことが背景にあります。ちなみに、2012年末の時点では適用企業数は10社でしたので、2013年から大きく増加してきました。やはり景気が上向いてきたときでないと、こういうサービスにお金が落ちてこないと強く実感します。

適用企業数の増加とは見込み客の減少である

これまで適用済みの企業が100社超ある一方で、すでに何かしらの準備を2017年までに開始している会社も含めるとおそらく300社程度にはなるのではないかと思います。IFRSを適用していない企業は刻一刻と減り続けています。

 

産業別に区切ってみれば、横並びで任意適用の時期を揃えていたりするところもあり、業界内でのプラクティスが出揃ってきているところも多く見受けられます。

 

とは言え、先行しているのは東証一部の上場企業ですので、大手の監査法人がターゲットとするような既存の東証一部の企業ではなく、これらから東証一部への鞍替えを考えている上場企業においてはまだまだ需要がありそうです。

うま味の減少と次の一手

ただし、全体的には、やはり事例が増えてきたことで報酬単価の減少は避けられないのではないかと考えています。上述の産業別の横並び然りです。日本での適用企業数が少なかった時期では、海外の事例をリサーチして、論点を整理して、会計方針に落とし込んだり、基準変更に伴う影響額を算定することは付加価値が高い業務でした。一部ではあるものの、その秘伝のタレも公開され始めると、やはりありがたみが薄れつつあります。端的に言えば、報酬単価減です。

 

先行しているBig4の部隊を中心に既存のサービスをどう変えていくのか、他のサービスとの組み合わせを検討するのか、これまでどおりが厳しくなってきているという意味で少し曇りかなと考えています。

 

 

にほんブログ村 士業ブログ 公認会計士へ